技術ブログ / 読了 約 10 分

Pega Constellation UI で「できないこと」と現実的な回避策

Pega Constellation UI で実装時に直面する「できないこと」——アサインメント画面のボタン・連続画面・List view の列など——と、標準の枠内での現実的な回避策を実装経験からまとめます。

結論から:制約は「縛り」ではなく「標準に乗るための設計指針」

Pega Constellation UI に移行して最初にぶつかるのは、「Section/Harness 時代にできていたことができない」という壁です。ボタンを好きな場所に置けない、連続画面が思うように組めない、一覧に出したい列が出ない——実装者からは「不便になった」と映ります。

しかし結論を先に言うと、これらは Pega が設計思想を変えた結果であり、正しく理解すれば回避策は明確です。

Constellation は宣言的で DX API 準拠が前提。「作り込まない(Configuration > Customization)」ことで、保守性とバージョンアップ耐性を得るための仕組みである。

つまり「できないこと」の大半は、標準の枠内に設計を寄せることで解決します。カスタム JS で無理やり実現するのではなく、標準の型に業務を乗せ替える——これが Constellation 時代の実装の基本姿勢です。本記事では、実装で頻出する4つの制約と、それぞれの現実的な回避策を整理します。

Constellation の制約と現実的な回避策の対応 任意ボタン・連続画面・一覧の列・マスタ保守の4つの制約それぞれに対する標準の枠内での回避策の対応図。原則は Configuration over Customization。 できないこと(制約) 現実的な回避策 任意アクションのボタンを フォームに置けない ケースの Actions メニューから起動 分岐なしの連続画面 (legacy な Screen flow は不可) Multi-step Form (分岐ありは Process flow) 一覧に深い階層の項目を 列に出せない top-level の scalar に持ち上げる (参照クラス / Table ソース / Data Ref) 業務ユーザーのマスタ保守 (旧 delegated ガジェット無) List view の CRUD (データモデル委譲・Pega '23 以降) 原則:Configuration > Customization(作り込まない)|カスタム JS 直挿しは避け、最終手段のみ DX Component
図:4つの制約はいずれも「標準の型に業務を乗せ替える」ことで解決する。カスタム JS の直挿しは避け、どうしても無理なときだけ DX Component を最終手段にする。

そもそも Constellation は何が変わったのか

従来の Section/Harness ベースの UI は、開発者が自由にレイアウトを組み、JavaScript を差し込み、独自のコントロールを作り込めました。柔軟な反面、アップグレードのたびに独自実装が壊れ、保守コストが積み上がる構造でもありました。

Constellation はこれを根本から変えます。

  • 宣言的(Declarative)/モデル駆動 — 「どう描画するか」ではなく「何を表示するか」を宣言する。描画は Pega 標準のコンポーネントに委ねる。
  • DX API 準拠 — UI はサーバーが返す DX API のメタデータに従って構成される。フロントエンドの描画は Pega が提供する Constellation コンポーネント(React 製)が担う。
  • Configuration > Customization — 標準設定で実現するのが原則。カスタマイズは最終手段。

この前提を飲み込めるかどうかで、Constellation プロジェクトの生産性は大きく変わります。「作り込めないこと」を欠点と捉えるとストレスが溜まりますが、「標準に乗せることでアップグレードで壊れない」という利点と表裏一体だと理解すると、設計の判断が速くなります。

注意: 本記事で挙げる制約と回避策は、Pega Infinity ‘25 時点の一般的な挙動を基準にまとめたものです。Constellation の仕様は Pega Infinity のバージョンごとに改善・変更され得ます。標準で置けるアクションや List view の対応範囲なども版によって差があるため、実装前には必ず公式ドキュメントで現行バージョンの仕様をご確認ください。

制約1:アサインメント画面に任意のボタンを置けない

Section 時代は、フォーム内に好きなボタンを配置し、そこから任意のアクティビティやフローを起動できました。Constellation のアサインメント画面(作業画面)は Pega 標準のフォームとして描画され、置けるアクションボタンは、原則として次の標準アクションに限られます。

  • Submit(送信) — アサインメントを完了して次へ進む
  • Save(保存) — 入力を保存して後で再開する(「save for later」。利用可否はケースタイプ側の設定に依存します)
  • Cancel(キャンセル) — 作業を中断する

なお、後述の Multi-step Form(連続画面)では、これに加えて画面遷移用の Next / Previous が標準で表示されます。いずれにせよ「この画面から追加のリクエストを起動したい」「別の処理を任意のタイミングで走らせたい」といった任意アクションを、フォーム内のボタンとして自由に置くことはできません。

回避策:ケースの Actions メニューから起動する

任意アクションは、フォーム内ボタンではなく**ケースの Actions メニュー(optional action / process)**から起動する設計にします。Constellation では、ケースに紐づくオプショナルアクションが実行時に Actions メニューに集約され、ユーザーはそこから追加処理を呼び出します。オプショナルアクションは、1 ステップで済むなら user action、複数ステップが必要なら process として構成でき、ケース全体(case-wide)にもステージ限定(stage-only)にも定義できます。

したがって UX 設計の段階から、「このボタンをどこに置くか」ではなく「この操作は Actions メニューの選択肢として成立するか」という発想で画面を描く必要があります。ワイヤーフレームを引く時点で Actions メニュー前提のレイアウトにしておかないと、後から「ボタンが置けない」と手戻りします。

制約2:Screen flow で連続画面を組めない

複数の入力画面を順番に見せる「ウィザード」的な UI を、従来は Screen flow(スクリーンフロー)で実装していました。Constellation では、この legacy な harness ベースの Screen flow の作り方はそのままでは通用せず、後継として Multi-step Form が用意されています。

回避策:Multi-step Form と Process flow を使い分ける

連続画面の作り方は、分岐の有無で2つに分けて考えます。

  • 分岐しない一直線の連続入力Multi-step Form を使う。Multi-step Form は「1 人のユーザーが完了する 1 つのアサインメント」を、複数の view(画面)に分割して見せる仕組みです。1 つの入力ステップ(Collect information)に複数の view を並べることで、ユーザーには連続した複数ステップの入力画面として見えます。
  • 条件によって工程が分岐するProcess flow / Subprocess で組む。Multi-step Form はあくまで一直線(linear)のフォームであり、分岐やループを伴う工程はフローの責務です。Multi-step Form に無理に押し込みません。

判断の型はシンプルで、「途中で道が分かれるか?」を問えば済みます。分かれないなら Multi-step Form、分かれるなら Process flow。ここを混同して、分岐ロジックを Multi-step Form 側に詰め込もうとすると破綻します。

Multi-step Form は設計上、1 フローあたりのステップを増やしすぎない(目安として 7 ステップ以内)・1 画面のフィールドを詰め込みすぎない、といったガイドラインが公式に示されています。連続画面が長くなりそうなら、工程自体をフローで分割することも検討してください。

制約3:List view の列に出したい property が出ない

Constellation の List view(一覧表示)でよく遭遇するのが、「optimize したのに、その property が列の選択肢に出てこない」という問題です。

原因は明確で、List view の列に出せるのは、行クラスの top-level にある scalar(Single Value)property だけだからです。embedded page(埋め込みページ)や page list の中にある property は、expose しても optimize しても、そのままでは列に出せません。

回避策:データを top-level に持ち上げる

対処は「その値を、一覧の行クラスの top-level scalar として参照できる形にする」ことに尽きます。具体的には次のいずれかを選びます。

  • 参照データクラス駆動にする — 一覧の対象そのものを、必要な項目を top-level に持つデータクラスにする
  • list 自体を Table のソースにする — 見せたいリストを直接テーブルのデータソースに据え、そのクラスの top-level property を列にする
  • Data Reference で top-level 化する — 深い階層の値を Data Reference で行クラスの top-level に引き上げ、列に出せるようにする

「なぜこの property は列に出ないのか」で止まらず、「その値を top-level scalar として持てるデータ構造になっているか」を先に確認するのが、この制約の勘所です。

制約4:マスタ保守のための delegated-rules ガジェットが無い

従来は、マスタデータ(料率表・区分マスタなど)を業務ユーザー自身が保守できるよう、delegated rules のガジェットをセクションに埋め込む手法がありました。Constellation にはこの従来型の埋め込みガジェットがありません。

ただし、委譲(delegation)という機能そのものが失われたわけではありません。Constellation でもルール/データタイプの委譲はサポートされており、業務ユーザーによるマスタ保守は、より整理された UI で実現できます。

回避策:List view の CRUD(データモデル委譲)で行う

マスタ保守は、**List view の CRUD 機能(データモデルへの委譲)**で実現します。データオブジェクト(データタイプ)に対する一覧・追加・編集・削除を List view で構成し、必要なら複数タブを持つランディングページに並べて、業務ユーザーがそこからレコードを保守できるようにします。ガジェットを画面に貼るのではなく、データモデルを直接操作する UI を List view として用意する、という発想の転換です。

なお、データオブジェクトの List view による CRUD(複数タブのランディングページ構成を含む)は Pega ‘23 以降で利用できる構成です。旧 UI Kit の委譲 UX と比べて操作性が改善されている点も、Constellation に寄せる動機になります。

判断早見表:制約と回避策の対応

実装で迷ったら、次の対応表に立ち返ると判断が速くなります。

やりたいことConstellation の制約現実的な回避策
フォームから任意アクションを起動置けるボタンは標準アクション(Submit / Save / Cancel、連続画面では Next / Previous)のみケースの Actions メニュー(optional action / process)から起動
連続した入力画面(分岐なし)legacy な Screen flow はそのまま使えないMulti-step Form(1 つのアサインメントを複数 view に分割)
連続した工程(分岐あり)Multi-step Form は linear で分岐を扱えないProcess flow / Subprocess で構成
一覧に深い階層の項目を列表示列に出せるのは top-level の scalar(Single Value)のみ参照データクラス駆動 / list を Table ソース化 / Data Reference で top-level 化
マスタを業務ユーザーが保守従来型の埋め込み delegated-rules ガジェットが無いList view の CRUD(データモデル委譲、Pega ‘23 以降)
標準にない独自 UIカスタム JS の直挿しは想定外まず標準で再検討。不可なら DX Component を最終手段

よくある失敗・誤解

Constellation の制約を前にしたとき、経験上ハマりやすいのが次の3つです。

誤解1:「できないから」とカスタム JS を直挿しする

最もやってはいけないのがこれです。標準で実現できないからといって、カスタム JavaScript を無理やり差し込むのは筋の悪い手です。Constellation は DX API 準拠の宣言的(モデル駆動)な構造であり、独自 JS の直挿しはアップグレード耐性を壊し、Constellation に移行した意味そのものを失わせます。

どうしても標準で実現できない場合に限り、最終手段として **Constellation DX Component(React ベースのカスタムコンポーネント)**を検討します。DX Component は React(TypeScript)で実装し、サーバーへ publish して App Studio から標準コンポーネントと同様に利用する、という正規の拡張手段です。ただしこれは「まず標準で本当に無理か」を徹底的に確認したうえでの最後の選択肢であり、安易に手を伸ばすものではありません。

誤解2:Section 時代の作り方をそのまま移植しようとする

「前はこう作っていた」を Constellation にそのまま持ち込もうとすると、ほぼ確実に詰まります。ボタン配置・連続画面・マスタ保守のいずれも、Constellation の標準の型は Section 時代とは別物です。移植ではなく、標準の型に業務を乗せ替える設計をゼロから考えるのが正解です。

誤解3:制約を「機能不足」と捉えてしまう

Constellation の制約は、Pega の機能が足りないから存在するのではありません。「作り込まない」という設計思想を実装レベルで方向づけるための仕組みです。制約に沿って作れば、標準コンポーネントに乗るため、プラットフォームのバージョンアップで UI が壊れにくくなります。制約は保守性とアップグレード耐性を得るための対価であり、そう捉えると設計判断がぶれなくなります。

まとめ

  • Constellation は宣言的(モデル駆動)・DX API 準拠が前提。原則は Configuration > Customization(作り込まない)
  • アサインメント画面のボタンは標準アクション(Submit / Save / Cancel、連続画面では Next / Previous)が中心。任意アクションはケースの Actions メニューから起動する設計にする
  • 連続画面は分岐なしなら Multi-step Form、分岐ありなら Process flow / Subprocess
  • List view の列に出せるのは top-level の scalar(Single Value)のみ。深い階層の値は参照データクラス駆動 / Table ソース化 / Data Reference で top-level 化する
  • マスタ保守は従来型ガジェットではなく List view の CRUD(データモデル委譲、Pega ‘23 以降)で行う
  • カスタム JS の直挿しは避ける。最終手段として Constellation DX Component(React)を検討する
  • 制約は「縛り」ではなく、標準に乗ることで保守性とバージョンアップ耐性を得るための設計指針

Constellation で「できないこと」に直面したら、その多くは「標準の型に業務を乗せ替える」ことで解決します。設計の初期段階から Constellation の型を前提に描いておくことが、後工程での大きな手戻りを防ぎます。


Pega Constellation への移行や UI 設計でお困りの際は、Pega Platform 開発支援無料相談 をご利用ください。Pega 認定資格の最高位 LSA(Lead System Architect)を保有するコンサルタントが、Constellation を前提とした設計判断からご支援します。

関連リンク

RELATED

関連記事

Pega データページの種類とスコープ設計|Thread / Requestor / Node の使い分け

「なんとなく Thread スコープ」で作られたデータページが、外部連携の呼び出し回数を無駄に増やしていませんか。本記事ではデータページの種類(Read-Only / Editable / Savable)とスコープ(Thread / Requestor / Node)の組み合わせを、キャッシュ範囲・データ鮮度・再読み込みの観点から使い分ける判断軸を、LSA 目線で整理します。

記事を読む

Pega DX API で独自フロントを作る判断|標準 Constellation UI との使い分け

Constellation は DX API 経由で UI メタデータを受け取りクライアントで描画する。この API は独自フロントの構築にも開放されているが、わずかな見た目調整のために独自フロントへ踏み込むと保守とアップグレードの負担が跳ね上がる。どこまで OOTB で、どこから DX API か——設計判断の分岐点を扱う。

記事を読む

Pega 保守費はなぜ高くなるのか|費用構造と削減の実践アプローチ

Pega 保守費の内訳を分解し、高くなる構造的要因(カスタム過多・体制固定)と、削減の実践アプローチ(標準回帰・体制見直し・部分内製化)を解説します。

記事を読む

Pega 導入のご相談はお気軽に。

Pega Customer Service / Pega Constellation UI / Pega Platform の各ソリューションについて、無料でご相談を承ります。